- 中央公論新社
- 17.5×11.2cm、220ページ
- ISBN 978-4121025609
- 価格 902円
著者は、「かぐや」やSELENE-2で研究員や検討会主査を務めた惑星地質学などの専門家。月着陸計画に関わって24年を経過しているそうだ。このため新書版の本書にはぎっしりその経験が詰まっていて、実に読み応えがある。月も凄いが、著者も凄いというわけ。
つまり、現在(現代)の月面探査は、どこに狙いが定まっているのかが、実に手に取るように判るのだ。月面に水がないことは、これまでは常識だったが、月の南北両極付近にある永久影(数か所)に水が蓄えられていそうで、飲み水として供給されそうだということが、判りやすく説明されている。これで、火星探査その他の経由地として開発できそうなことが有力になり、原子力電池を使用せず、ヘリウム3などの鉱物資源を採掘することによって、エネルギーが確保できることも、判りやすく詳細に説明されている。日本の宿敵中国がそれを狙っていることもよく判る。第7章の月での食糧問題は、大変にユニークな観点で面白い。
…というわけで、数年前に神田の古書店で購入した同著者の『世界はなぜ月をめざすのか』という題名の本を思い出して、再読してみた。本書出版までの5年間の、月の宇宙開発の驚異的進歩が手に取るように理解できる。皆さんも、どうか皆さんの目で確認していただきたい。楽しいですよ! 人間は凄いのだ!