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Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

宇宙を語る I 宇宙飛行士との対話

表紙写真

  • 立花 隆 著
  • 中央公論新社
  • A6判、224ページ
  • ISBN4-12-204853-2
  • 価格 600円

評者も読ませて頂いた「田中角栄研究」「宇宙からの帰還」などの名著で知られる著者が、1996年に刊行した「[立花隆・対話編]宇宙を語る」を分冊し、一部(2005年に行われた野口聡一宇宙飛行士との対話)を新たに追加して収録した4人の宇宙飛行士(毛利衛・向井千秋・菊地涼子・野口聡一)との対話集。

シャトルで実際に宇宙に行った人々が語る話に、例えば「フロンティア精神による米国的宇宙開発の意義付が日本では理解されにくい」「宇宙に行った感動を人に伝えることは人間しかできない」(共に毛利氏)、「地球重力空間の医学的意義」「暗黒宇宙の黒は地球上で見る黒とは違う」(共に向井氏)、「自分が帰還しないことを含め全て想定内」「マンション偽装問題など成功追求のためまだ大丈夫と基準を緩めてしまう組織の自己欺瞞の問題」(共に野口氏)など、教唆されることが非常に多い内容だ。

だが評者にとって本書最大の価値は、TBSの女性カメラマンで秋山さんとともにソ連での訓練を受けた菊地さんが語る「宇宙に行くことを止めず、ために別れることになり、自分の人生が自分の人生でなくなったと感じた」という話にある。何のことやらお分かり頂けないならぜひお読みいただきたい。

またソ連の「星の街」のプラネタリウムで宇宙船が飛ぶ軌道に沿って星空のシミュレート投影を見ている際、「心の底から宇宙遊泳をしてみたいと思った瞬間があった」という語りは、評者にとって大きな感動である。教えが多数含まれている本なので、ぜひ推薦したい。

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