- 東京大学出版会
- B5判、260ページ
- ISBN 978-4-13-062713-9
- 価格 3,360円
天文学者ではない方々が書いた天体の本。書店の書棚で本書を手にしたときの、評者の率直な第一感想は、昔話だった。感想というより思い出というべきだが、評者が学生時代だった遠い昔、それはアポロ11号月着陸、つまり前世紀の1969年以前のこと。天文学者と地質学者が月のクレーターに関して論争を始めると、そのどちらも老い先が短いといわれたこと。その「こころ」は、観測眼と足腰が弱まり、フィールドワークができなくなった証拠ということ。
この本を読むとまさしく時代が変わったと感じたのだ。従来の地質学の本同様、この本には数式が一つも出てこないが、今や人工衛星という強力なフィールドワーク用具が使われ、天体(ただし系内惑星のみ)が地質学の一分野に名乗りを上げた感じだ。おかげで天文学者の居場所は、系外惑星に移ってしまった。ともかく、これほどまで惑星天文学が進んでいるのかと目を見張る内容になっている。もちろん専門書であり、気軽に読める普及書ではないが、現在のところ、系内惑星について調べるときには絶対の読まねばならない本である。