- 日本放送出版協会
- 新書変型判、213ページ
- ISBN 978-4-14-088236-0
- 価格 735円
天文学の普及を研究テーマにしながら、実践もされている著者(国立天文台唯一の教育学博士)の思いの丈を著述した価値ある本。「宇宙探求は、自分自身が住むこの世界を更に深く理解しよう、という人間の本能に裏打ちされた生命活動のようなもの」という著者の信念に敬服する。評者もそのとおり!と思うからだ。これを基本姿勢に、著者は現役の研究者や歴史的人物を通して、天文学者の実像に迫り、その共通する特徴や欠点について興味深くえぐり出していく。果たして天文学者はロマンティストであるか否かについては、本書を通じて読者に決めていただくこととしよう。わが国の理科教育の問題点と、大人の科学技術知識に関するレベルの低さの指摘、および「天文学はみんなの科学」との確信については、評者もまったく同感である。また、サンフランシスコのエクスプロラトリウム副館長センバー氏の言葉「科学普及という仕事について、欧州では対話、米国では理解、対する日本は興味・関心と参加意識」の紹介も面白い。これらの点から本書は、題名にやや惑わされそうだが、大変シリアスな主張がされた重要な本であると、評者は考えている。