- 早川書房
- A6判、428ページ
- ISBN4-15-050308-7
- 価格 819円
1999年3月刊の単行本が2006年5月に文庫化され、より気軽に購入できるようになった。サブタイトルがピッタリで、すばる望遠鏡の構想から開台まで最前線で苦労された著者の貴重な経験を伝える自伝的著書である。天文少年から始まり天文学生、天文留学生、天文研究者と進んだ天文一筋の著者だが、「天文学者は日本では道楽者の変人、外国では職業人」という本文中の言葉が痛々しい。評者も学生時代(60年代)に大望遠鏡の国外設置に関する大闘争を伝え聞いていたが、著者を海外設置に傾けた真の理由、東京天文台国立化の経緯等について初めて合点が行った。もちろん、その後の経過も手にとるようにわかる。粗野な評者とは大違い、ジェントルマンの著者だから、苦労話・裏話の類は至極淡々と描かれているが、想像力をフルに働かせて読めば、その築造が単に「最新技術の大成果」だけでないことが分かる。最後まで課題となった職員の赴任手当て問題には、評者も大泣きに泣けた。科学史第一級の資料だ。