- 早川書房
- A5判、512ページ
- ISBN4-15-2086-64-5
- 価格 2,940円
地球の大きさを基準とした新しい尺度「メートル」を定めるために、壮大な測量ミッションへと旅だった2人の天文学者。革命直後のフランスで繰り広げられた人間劇を、歴史的背景や現代科学との関わりと絡めて描いた秀逸なノンフィクション。片方の天文学者が自らの観測結果に悩み、人生の歯車をも狂わされていく様子が克明に書かれているが、その観測結果が後に重大な科学的革命をもたらすのには驚かされる。
フランス革命という時代の激動のさなか、なぜフランスでメートル法が制定されたかについては、これまでほとんど明らかにされていなかった。中でもメシェンとドゥランブルというパリ天文台の学者が、いかなる苦労を味わいながらこの仕事をやり遂げたかについては、まったく不明だったが、本書は日付を追って克明に二人とその関係者を追跡している。豊富な書簡や公文書資料の分析から、メシェンが虚偽の行為を行うに至り、その悔悟に悩み苦しみながら、黄熱病に倒れるメシェンの心の問題を伏線に、きわめてドラマチックに描かれているノンフィクションは圧巻である。
本文450ページ有余、資料集約50ページだが、その訳文筆致は大変こなれており、名訳である。大部を感じさせることはなく、評者は一気に読み上げることができた。天文学、測地学、そして広く歴史学に関心を持つ方必読の書である。