- ニュートンプレス
- 新書変型判、191ページ
- ISBN 978-4-89309-457-5
- 価格 2,499円
本書を見て評者は、いよいよ出版界の常識がわからなくなり、改めて広辞苑を調べたのだ。すると、magazine+book=mookということがわかった。要するにその中間ということだそうだ。だが、その意味では本書はムックでなく、完全にブックである。それほど内容は単行本同様高度だが、写真や図も手が込んだ高級さである。でも図鑑や写真集は一般的にはブックでしょう、みなさん?ムッムッ。
評者が考えるには、太陽近傍にあって研究が困難な彗星はもちろん、木星や土星や金星と比べても、科学的な観点で古くから研究されているのが火星であろう。ホイヘンス、カッシーニ、スキャパレリ、アントニアジ、ローエル、佐伯恒夫をはじめ、一時代を画した著名天文学者がズラリである。だが、火星物理学・火星気象学・火星地質学を扱う本書を完成させたのは、古くはマリナー、バイキング、新しくはマーズ・パスファインダーやマーズ・グローバル・サーベイヤー、スピリットなどの火星探査機による詳細な調査だ。
そして、将来の火星探査について、これほどまでに現実的な夢が語られている本も珍しいのではないだろうか。掲載された写真の美しさには目を見張る。大袈裟ではなく、本書は最新版「火星のバイブル」である。それは著者がフランスの新進研究者であると同時に、訳者の水谷ニュートン編集長が実力ある天文学者であるからに違いない。