- 光文社
- 224ページ
- 定価 858円
今から半世紀以上前の1969年7月21日、評者は尾瀬高原の林間学校で、大勢の女子中学生と共に8cm屈折望遠鏡を使って月を観望し、「あそこに男の人がいるんだよ」と叫んでいた。もちろんアポロ11号の月面着陸だ。歴史的快挙だった。それ以来、何人もの男性宇宙飛行士が月面を踏んだが、女性は一人も登場しなかった。だが、近々女性が行くはずだという。それでやっと、人類が月に行くことになるのだ!
なぜ人は月に行こうとしているのだろうか。評者が思うのは、発展こそが人類共通意識なのだろう。でなければ、人類は必ずだめになってしまい、やがては絶滅することになるからだ。本書は、そのことをつくづく思い知らせてくれる。決してアメリカ・ロシア・中国などの国家間の競争や覇権主義ではない。人類が生まれながらにして所有している未来志向なのだ。天国や極楽・地獄などは、多分死ねば必ず行けるのだから、月や火星などの宇宙空間に飛び出して冒険することは、人類共通の夢なのだ。本書はそれを後押ししてくれる。だが、それ以上に今当面は、月科学者が謎に思っている縦孔や溶岩チューブについて、本書は詳細に語ってくれる。その謎を解明することが如何に重要か、それが月という存在の謎を説明してくれるのだ。月で移住生活が可能かなども含めて、本書を熟読すると、ワクワクしますよ。未来を背負って立つ真面目な皆さんに、ぜひお勧めします。