- 光文社
- 246ページ
- 定価 1078円
火星に人が旅行滞在するようになる、あと四半世紀後には、評者はあの世(あれば…)に滞在することになる(いつまでかは不明)が、その前にまるで火星(あの世より遠いか近いかは別にして)に行ったような気分になれる本書に出会ってしまい、「あぁ幸せだなぁ」と、しばらくの間感じ入ってしまった。貴重な本ですよ!
ともかく、ここ300年間の地上からの望遠鏡観測と、わずか50年間の火星観測衛星だけで、よくもこれほど詳細な事柄が判ったモノだという感動に溢れた。もちろんフォボスとダイモスにも行ってみたいが、何より太陽系最高峰のオリンポス山に登ってみたい。次には、食変光星屋の一生の友「アルゴル」の関係者「メデューサ」が住むというアマゾニス平原や、スキャパレリやローエルなど多数の火星観測者の目を悩ませた「水」の発源地である火星の両極地域にも行ってみたい。
本書を読んで改めて感じたことは、地質学や地形学の重要性である。巨大ガス惑星の木星や土星、あるいは太陽に近いため、地球環境とは大違いの水星や金星、あるいは氷惑星と呼ばれ、太陽から遠すぎる天王星や海王星よりも、まず火星探査が、地球の研究に重要であることは、本書を読んでよく理解できた。だからこそ、南極での科学探査が火星との類似性という意味で重要なのだ。皆さんも火星に行った気分になりませんか?