- 光文社
- 248ページ
- 定価 1078円
著者の来歴は本書の著者紹介でご覧いただくとして、数々の著書も出版されている。評者にとっては、『天文学者が解説する 宮沢賢治『銀河鉄道の夜』と宇宙の旅』が最も印象深いが、いずれにしてもその文学的才能は最高である。だが本書で迫っているのは、先生本来の理論天文学である。
天文学、というか物理学全般は、動く=場所の移動がなければ始まらない。すなわち、エネルギーの発動である。最初に宇宙でそれが起こったのがビッグバンだ。そのエンジンこそが宇宙を動かすモノである。そしてその裏にエネルギーが隠れている。だが、2022年現在それは全くとらえられていない。見えないからダークエネルギーと揶揄されている。
評者は晴れた夜、オリオン座のベテルギウスと対面し、「今日も生きていたね」と話しかけている。その後おもむろにぎょしゃ座のカペラとおうし座のアルデバラン(わずかな変光星)と見比べている。そして○×時△□分に●.▲等と決めているのだ。変光は場所の移動ではないが、エネルギーの変動ではある。だから、評者はベテルギウスがまだ生きていると、毎晩確信して寝床で眠りに就くのである。できれば、ベテルギウスを見ながら、永遠の眠りにも就きたいと願っているのだ。読者の皆さんもそのエネルギーやエンジンについて、本書を通じて改めて考えてみるのはいかがですか?