- 光文社
- 328ページ
- 定価 1012円
JAXAやNASA、ESAなど国家的事業体が主役だった時代から、2021年では民間主導型の宇宙開発に変化し、同年は遂に「民間宇宙ベンチャー元年」と称せられるようになった。そして、本書が出版された現在、アポロ計画などの記事はこれっぽっちも読むことができなくなり、最早歴史文書と化した。
思い出すのは、評者が私立中学の教師になって、林間学校の引率教師として望遠鏡をバスに乗せて尾瀬に行ったときのこと。その7月21日に宿舎から望遠鏡で生徒達に月を見せ、生徒達が感極まっているそばで「そこに人がいるんだよ」と叫んだ記憶がある。人類として最高の思い出となったが、今やそれは当たり前。この次は火星ですね!
いや、その前に宇宙から見る地球とか、宇宙から見る宇宙など、数々の視点の相違が登場するはずだ。人が高山から地面を、海底から海面を見たりする以上に、宇宙→宇宙は、これ以上のものがないから感動するだろう。天国や地獄の存在が疑問視されるに至った現在、宇宙は最もスリリングでアドベンチャーで冒険的な対象物である。
そんな宇宙を仕事にできるようになったのは、いかにも現代的なこと。21世紀や22世紀の終わりは、一体どんな時代になるのだろう。そんな、昔ならば空想やSFとしか言えなかったことが、本書では当たり前のことになっているのです。