- 光文社
- 四六判、484ページ
- ISBN 978-4-334-96204-3
- 価格 2,415円
2003年2月1日、科学実験のみを目的とした最後のフライトを終えて帰還の途についたスペースシャトル「コロンビア号」は、大気圏突入時に空中分解した。打ち上げ時に外部燃料タンクからはがれ落ちた断熱材がシャトルの左翼前縁を傷つけ、高温のプラズマがその傷から浸入して、シャトルの翼を内側から溶かしたのだ。7人の宇宙飛行士の命を奪ったこの事故は、別の3人の宇宙飛行士にも危機をもたらした。本書は、その3人の宇宙飛行士、エクスペディション6と呼ばれる国際宇宙ステーションの第6次長期滞在チームにスポットを当てる。シャトルの打ち上げ再開はいつになるかわからない、ISSにドッキングしている緊急脱出用のソユーズを使えば帰還は可能だが、それは常に維持管理が必要なISSを無人に、つまり放棄することになる。唯一の方法は、脱出用のソユーズを新しい機体に入れ替えるために定期的に行われる「タクシーミッション」を利用することだ。ところが、ドッキングしているソユーズTMAは初めて打ち上げられた改良型で、帰還の実績はまだない。万一のことがあれば、ISSに別の3人が取り残され、さらに帰還の方法がなくなるという事態に陥る。そんな追い詰められた状況下でも、彼らは宇宙での業務を着々とこなす。それは達観と呼ぶべきか、それとも諦念なのか。