- ごま書房
- 151ページ
- ISBN4-341-13086-2
- 価格 1,260円
星の伝承研究で有名な著者の快心作。著者は既に、この分野の元祖野尻抱影氏の右に出た。同胞相手に星を解説するプラネタリウム・レクチャラー必読の書。東亜天文学会誌「天界」に1年半にわたって連載された「天文民俗学試論」を大幅に改筆したものという。ルポ形式なので表現が大変に優しく、評者は大昔たった一度しかお目にかかっていないが、文章を通じて著者の温かい眼差しとお人柄が、読者の誰にもひしひしと伝わってくるはず。
また、日本人の星に対する憧憬にも共感を呼ぶ。当然のことながらエピソードが豊富に紹介され、今ではクルージングと称して飲めや歌えの大騒ぎの東京湾で、かつてはとうとうと天の川が流れ、鯨が泳いでいたこと、幼稚園・保育園の行事でしかなくなった七夕祭りは、むかし一人一人の生活の中にあったという筆者の記述に、評者は大いに同感する。おじいさんおばあさんの星の話が、今日の時点で、記念碑で終わらないよう願いたい。