- 幻冬社
- 新書判、295ページ
- ISBN4-344-98015-8
- 価格 861円
近年、日本で実力が目立つサイエンスライター。京都大学工学博士の著者もその一人。科学研究の核心を突きながら現場に深く踏み入り、関係者の心の内を見事に描き出す。探査機はやぶさ打上げをプロローグ、国産ロケット・探査機開発史を中軸、はやぶさの活躍と2010年のサンプラー回収を待つエピローグ。だが、本書最大の価値は、一章から三章までに記された“糸川英夫”感動のノンフィクション・ストーリーだ。小判の新書でよくここまで掘り下げられたと思うほど、糸川の人柄と思考過程が描き出されている。現在の宇宙研に脈々と流れているものが、読者にも手に取るように分かり、魅了されるはずだ。 評者はあちこちに線を引き、真っ赤にしてしまったが、中でもP87の「科学・技術を学ぶということは、敬虔な気持ちで自然に接し、自らを無にして、天地の声に耳を傾けることに他ならない」という筆者の叫びを、最大のメッセージと受け止めておきたい。