- 祥伝社
- 新書判、232ページ
- ISBN4-396-11062-6
- 価格 788円
芥川受賞作家が書いた科学史の本。200ページほどの小冊子ながら読み応えがあった。なぜなら、一語一文ごとにがくっと考えさせられたからだ。文学者でありながら科学に造詣が深いことは、あらゆるところに滲み出ている。評者が本書に注目したのは、科学者が見る科学史ではなく、宗教という観点から科学史を見る見方である。著者と評者の相違は、作家vs天体観測家、宗教学者vs隠れキリシタンであり、著者と評者の見解はかなり相違するのだが、著者が、ピタゴラス、ダ・ヴィンチ、ガリレイ、パスカル、ニュートンそしてアインシュタインまでの科学者達が、精神的にいかに深く宗教と関わってきたかを裏付けるあたりは、従来の科学史本にない新鮮な観点である。第3〜5章のダ・ヴィンチ評価や、第9〜11(エピローグ)章のビッグバン宇宙論の背景に、神意識があるという論点は特にユニークで、多分ヨーロッパ人にはできない科学史の見方だ。熟読をお勧めしたい。