- 誠文堂新光社
- A5判、167ページ
- ISBN 978-4-416-20913-4
- 価格 2,310円
評者も「昔はよかった」と言うほど年をとってしまったのが、このごろ実に悔しい。しかし観測屋にとっては仕方ない現実だ。山本一清先生、小槇孝二郎先生、神田清先生、下保茂先生(以上順不同)らによる観測法の名著は、古書店でも入手できなくなりつつある。
だが、素晴らしい朗報が新書店からもたらされた。本書である。カナダの大学准教授でカナダ宇宙庁隕石衝突諮問委員長かつカナダ王立天文学会誌寄稿編集者という肩書を持つ、隕石・彗星・小惑星の研究家。そんな著者による、実践的な流星観測法の教科書を、日本流星研究会のみなさんが長谷川一郎先生の指導のもと見事に和訳してくれたのだ!
英語の原題が全てを物語る。“Meteors and Meteorites: origins and observations”(流星と隕石:起源と観測)。第1章で流星・隕石とは何かが最新のデータをもとに語られ、第2章では年間の定常流星群のあらまし、第3章で火球とは何か(火球のために1つの章を設けるほど詳細に語った記事を、これまで評者は読んだことがない)、第4章で隕石捜索の詳細が解説される。第5章以下がいよいよ本領発揮で、眼視観測から始まり、写真・ビデオ観測を経て電波観測まで、詳細に、かつ「夏場でも手袋と帽子が要ります。保温と毒虫対策に」などかゆいところまで手が届くように紹介されている。この本を読んだら、評者のような偏向した変光星屋ですら、流星観測をしたくなる。
「明日未明、流れ星がたくさん飛ぶかも知れないので見てね」とお客様にすすめる手前、晴れていたのに「見ませんでした」とは口が裂けても言えない、というプラネタリウム解説者は、少なくとも本書を読みたまえ。……もちろん純真無垢な天文ファンも同様です。