- 誠文堂新光社
- A5判、167ページ
- ISBN 978-4-416-20914-1
- 価格 2,310円
今や、天体観測は理論より発達しているのではないだろうか。特に本書が守備範囲とする惑星観測では、LRGBカラー合成法による惑星撮像やら画像処理による強調、大気による微分分散の軽減処理、スタックやウェイブレット、マカリィなどなど、強力な道具がそろっている。評者の学生時代(40年以上前)は、せいぜい半日以上写真暗室に篭ってトライX増感現像やらコンポジットを行うのが関の山だったし、何しろ主力計算機がタイガー製手回し計算機。それと比べて現代は「なんじゃコリャ」なのである。でもそれだけに、嬉しさも人一倍だ。観測室や暗室そして実験室で、失敗に失敗を、苦労に苦労を重ねたのが良い思い出である。技術の進歩は手放しで喜びたい。
第1章の技術編を読むのはやはり後輩の皆さん方にお任せしよう。私が安心し、心を落ち着けて読ませていただいたのは第2章の惑星別の観測編である。水星から天王星・海王星まで、太陽系天体の観測やデータ処理の方法について説明した本の中では最高レベルの記事ばかり。やはり圧巻は火星と木星、それに土星の情報だ。ダストストームや大赤斑の解析など、記事を読んでほっとするほどである。
本書のシリーズは既刊書も含め「天文アマチュアのための天体観測の教科書」と銘打たれているが、少なくとも天体を観測するのにはアマチュアもプロもない。天文学者と自他ともに認めていても、観測はほとんどやったことがない方が多く、逆に職業としないと言う意味ではアマチュアでも、プロ以上の腕を持つ方も多くおられる。本書の執筆者たちはまさに後者の典型。だから、その記事は重量感がある。執筆者の皆さんはもとより、企画・出版元の誠文堂新光社さんにもありがとうと言いたい。