- 筑摩書房
- 209ページ
- 定価 924円
評者は、以前から古代の人々が宇宙をどう捉え、どう接し、自身の頭脳で理解していたかについて、深い関心を懐いている。何故かと言えば、星座神話を作った理由、いかなる宗教もそれぞれ独特の宇宙観、天国や地獄などの世界観をそれぞれ独特の表現で表しているからだ。そこが他の生物と大きく異なるところであり、ある意味で人類最大の特徴だからでもある。前々から、評者は犬や猫は意識して星を見ていないと思っている。だから、彼らには死んでも行く先がない。人類の文明とは、星空を意識したために生じたと言っても過言ではないはずだ。
だが、それが生じたきっかけになった一つは、気候変化だと思っている。つまり春夏秋冬、暦を知ること。それが各地にある大小ストーンヘンジの建設の動機となった。すなわち太陽の位置変化に気づいたことである。そして、それがエジプトばかりでなくマヤやアステカなど各地に見られるピラミッドの建設に繋がった。多くのピラミッド内部に階段が作られたのは、埋葬された者が上にある(何故かは別として)と考えられた天国に昇っていくためなのだ。また、一周が360度に分けられたのも、一年365日に由来する。
ポリネシアなどの海洋民族国家と星の神話の考察も興味深い。キトラ古墳になぜ古代中国の天図が描かれたか、日本古代史を研究する人は、ぜひ考えてみていただきたい。