- 東京書籍
- 240ページ
- 定価 1760円
本書は宝石のような一冊。撮影者の関岡大晃さんにお会いしたことはないが、評者の2.5分の1に満たない20代後半の若い星景写真家で、SNSで活躍中だそうだ。若い人は何時何処にでも行けていいですね。本書冒頭を飾るウィンター・ヘキサゴン(冬の大六角)などは、まずもって、ホレボレとしてしまう。それに続く、銀河の手前を走る夜汽車の写真などは、ロマンですね。数枚の天の川を撮影した写真を見比べても、こうも異なる季節変化があるものかと、大いに感心してしまう。
導入部の「夜空の基本」には、恒星や惑星の相違、星の色や明るさの相違などなど、基本のキが説明されており、様々なこだわりの出発点が説明されている。その後、春夏秋冬の季節の星座が述べられ、最終章に至って太陽系の天体が説明されている。こだわり天文学者にこだわっている評者は、八重山地方にある珊瑚石灰岩で造られた立石状の星見石や方位石状の星見石を、ぜひ見学してみたい。民俗学的だけでなく、科学史的にもおもしろいはずだからだ。星や月が家紋のモチーフになった例からして、その一例である。五芒星が一般的になったのは、西欧でも19世紀からであることを評者は指摘しておく。
近年の科学史の見方では、天文学は最も古くから存在する科学だと言われるようになった。評者がその見解を確信するようになった一因が、本書掲載の写真一枚一枚にある。