- 日本経済新聞出版社 刊
- 17.5×10.9cm、304ページ
- ISBN 978-4532262839
- 価格 1,026円
端的に申し上げる。評者が最も評価しているのは本書が、おそらく宇宙の最後はビッグ・リップであると、これもおそらく日本で最初で唯一断言されていることにある。勿論本書に明記されているように、それは大きな唇(Lip)ではなく、大きな張り裂け(Rip)だ。多分ダークエネルギーが、その斥力によって物質全てを引きちぎり、全てを原子にしてオシマイに至るというストーリー。
評者は早速、あちこちのカルチャーセンターで行っている講座で、最新宇宙論として紹介することにした。すると、受講生の皆さんから返ってきた質問は、仏教で言っている極楽、キリスト教などの天国は、どこにあってそれはどうなるのでしょう? だった。誰もがそう思いますよね。評者はどう応えたかというと、極楽や天国は人間が考えたもので、動物や植物その他諸々は、そんな実体を考えていませんよ、である。現在隠れキリシタンである評者の答えと思えます?
どちらにしても、これは本当に宇宙をマジメにとらえた本。研究者小松氏が語り、文筆家(東大教養学部科学史・科学哲学専攻卒)の川端氏の連携による傑作である。宇宙の始まりから本書はスタートし、インフレーション・重力波・バリオン音響振動・宇宙の漣=コサイン波、暗黒エネルギーを経て、ビッグ・リップ=宇宙の終わりに至る。実に明快かつ壮快!