- PHP研究所
- 15×13cm、253ページ
- ISBN 978-4569767826
- 価格 734円
本書は、評者がこの数年間この書評でご案内した200冊の本の中でも、特に勉強になったものである。文系の代表格と思っていた歴史学が、こと暦のそれに関しては完璧に科学だと認識したからだ! そもそも科学とは想像とか思いこみではない。それは何よりも、原因から結果の流れの中で見つけ出す合理性に基づいているものだ。例えば、古代マヤ文明に数多く残された遺跡群、イギリスのストーンヘンジに代表される巨石文明、アイルランドのニューグレンジ巨石群、ナイル川上流のアブシンベル神殿などは、いずれも暦(特に冬至)に関わる施設(科学的に言えば観測機械)なのだ。なぜそれが要求されたのかというと、神話や宗教ではなく、農牧業に必要とされたからだった。本書著者は、巻末の来歴から法学部卒業・社会学部博士課程・大阪商業大学学長を経たギャンブル社会学を専門とする、れっきとした文系の学者。従来ならそういう方が歴史学ではなく暦学の歴史を書いて、評者がショックを受けることはとても想像できなかったのである。中でも、これまで単なる船乗りで、不思議な民族としか(少なくとも評者には)捉えられていなかったフェニキア人こそ、アフリカ東海岸からケープタウンを回遊し、西海岸を経て地中海に戻る間に、南天の星が北半球とは逆向きに回ること=地球が球であることを初見し、それ故星座を作り、太陰太陽暦を作成し、日月食の予報(暦)を創ったのだ。ぜひお勧めします。