- PHP研究所
- 352ページ
- 定価 1793円
タイトルから推察する内容と実際のものは大違い。一言で言えば銀河天文学の本。著者のご専門が宇宙で一番大きな構造体の銀河の研究なのでそうなるわけ。ともかく、目先の生活に囚われたこの世に生きる皆さん、しばしの間、銀河間宇宙に飛び出して、銀河衝突合体や銀河の三密、流行のウイルス問題(ダークエネルギーや時間のこと)、そもそも銀河の歴史が宇宙の歴史であることに、本書で気づかされるだろう。ボヤーッとしてはいられない。
本書評で何回か取り上げさせていただいた著者にお会いして直接お話を伺ったことは、残念ながらないが、放送大学講座での面会は毎回楽しみにしていた。宇宙や天文の普及に熱心な先生だなと感じ入ったもの。それが銀河鉄道の旅に通じる。評者は近年、天文学者が天文学者になったきっかけを調べ始めた。望遠鏡で土星を眺めた途端とか、欠けた金星、悠々たる天の川、爆発する流星、みるみる内に変光するアルゴルなどなど、様態や経過は人によって様々だが、著者も幼少時を過ごされた旭川市の綺麗な夜空に憧れたという。宮沢賢治も屋根の上に上がったまま、星座早見盤に夢中になり、夕食でも降りてこなかったことが証言されている。要するに、星少年はあくせくせずにしぶといのだ。
楕円銀河にラグビーボール型とアンパン型があることも本書で初めて知り、形態の観察が「科学の始まり」であることも大切ですね。あらためて銀河に乾杯だ!