- 丸善
- AB判、128ページ
- ISBN 978-4-621-08174-7
- 価格 2,940円
全127ページのうち107ページ目までは「宇宙を見つめて10年間」と題した、何分見つめても飽きることのないほど美しい天体写真であふれたコーナーだ。美的なばかりでなく学術的でもあり、可視光とは違った雰囲気の赤外線画像からは、現代天体物理学の最前線を心行くまで味わうことができる。天文の勉強をしている人々の冥利に尽きるとも言える。55ページに掲載されているNGC7293らせん星雲の近赤外線カメラによる画像など、ぞくぞくしてしまうほどだ。特に78ページ以降の躍動する銀河たちの画像が素晴らしい。つい数年前までは銀河の写真と言えば静物画だったが、今では衝突や活動の様子がはっきりととらえられている。本書を見ると、宇宙は生きているのではないかと感じられるだろう。
だが、本書の真の価値は望遠鏡や撮影装置について解説する108ページ目以降にある。高画質を実現するために必要とされる観測条件と光学技術や、画像処理のあらましが説明されるとともに、昔から続く写真術の発展などが展望されている。これはめったにお目にかかれない価値の高い記事だ。
すばる望遠鏡の次の課題や、次世代望遠鏡について語る結びも素晴らしい。本書は文化遺産というべきものであり、すべての天文愛好者におすすめしたい。