- NTT出版
- 四六変型判、240ページ
- ISBN 978-4-7571-6021-7
- 価格 1,995円
昨年1月のスタート以来、評者は一年間で120冊以上の天文書(子供向けを含む)を完読した。一ヶ月に平均10冊以上。これまでぼんやりと過ごして来たウン十年では目覚しいペースで、定年になってからの方が忙しいとは、思っても見なかった。評者は死ねない。そして本書を完読して、さらにそうなってしまった。天文学はメチャクチャ面白く楽しいのだ。
だってそうでしょう?本書では、暗黒物質だってブラックホールだって手に取るように見えるのですよ! 暗黒物質の空間分布図なんて貴重なお姿を、評者は本書で初めて拝見させてもらった。宇宙初期に太陽の百兆倍も重いモンスター銀河が何故できたのか。宇宙は闇に操られているというお話は、まるで宗教の世界! いよいよ宇宙は不思議そのものになってくる。
著者の「研究対象に旬はないが研究手法には旬がある」「アイディアは寝ていてやってくるものではない」「研究をしたいのなら、まず関心をもて」の言葉も、真にありがたい。各章始めに記された文豪夏目漱石の箴言が、これもまた楽しい。谷口先生、見事成功ですよ!
本書の構成も良く考えられている。著者のチョー散文的な文章も効果を上げ、ミョーにもったいぶった言い回しでないところが実に科学者的で説得力がある。しかも始めはローギアで、やがてアクセルを踏み、最後はチョー加速でブッ飛ばされて結論という、読んでさわやかな本だ。やりなおしサイエンス講座、成功!著者と編集者と出版社さん、ありがとう。