- 化学同人
- 248ページ
- 定価 990円
評者は、以前からキリスト教や仏教で宇宙がどのようにとらえられていたか興味を持っていた。特に、ガリレオやケプラーなどの天文家を多数輩出し、科学の礎を作り出したキリスト教は申し上げるまでもなく、様々な経過があって面白い。だが、こと仏教となると、ほとんどの宇宙関連知識が伝えられずに今もって知られていない。宇宙という漢語が空間と時間を意味しているのにもかかわらず…だ。読者の皆さんは、平たく言えば「宇」が屋根、「宙」が時間であり、あわせて時空間であるってご存じでした?
アビダルマコーシャ(倶舍論)、すなわち「この世界の見方」と現代的科学的世界観の交錯によって、世界観は一体どうなるかを本書は語っている。といっても、実は簡単ではない。何しろ、それが語られ始めたのは、今から2000年ほど前のこと、それも日本ではなく、ガンダーラと呼ばれていた現在のカシミール地方である。今回のオリンピックで読者の皆さんも多数の外国人選手をご覧になったと思うが、風貌だけでなく多数の人々が入れ墨を体に施し、様々な立ち居振る舞いをしていたことに、改めて世界は多様なんだなぁと、評者は驚くばかりだった。この風習の違いはかなりの部分、宗教観や世界観の違いによっているのだろうと、評者は考えている。そのため本書を購入し、熟読した。読者諸氏も現代の科学的宇宙観が唯一ではないことを、学びとっていただきたい。お勧めします。