- かんき出版 刊
- 21 x 15cm、160ページ
- 2014年6月
- ISBN 978-4761270070
65歳で定年退職後、相変わらずカルチャーセンターなどで天文普及に従事している筆者のような人間にも本書は貴重な本。なぜなら、高名な宇宙物理学者である著者が専門的最新知識をもとに初心者に語りかける技術が、とても勉強になるからだ。中でもエピローグの「原始重力波の初観測?」がありがたい。BICEP2 B望遠鏡が見た渦模様の話だ(関連ニュース)。専門的な話はともかくとして、それが初めての重力波の発見となるかもしれないことについてわかりやすく説明されており、この語り口ならおそらく誰にでも現代宇宙論最大の問題点が浮き彫りになるはずだからだ。筆者はぜひともそれを真似たいと思った。
もちろんほかの箇所も参考になることばかりで、学者が書いた普及書であることは一目瞭然、お父さんお母さんに向けてのやさしい天文学の教科書という感じだ。子どもだけでは理解が困難そうな箇所はあるので、ご両親による指導が要求される内容ではあるが、現代天文学が全て網羅された内容である。
特に第2章以下の、太陽磁場変化による地球寒冷化、月の形成にまつわるジャイアント・インパクト説、水星探査機ベピコロンボ計画、キュリオシティの火星探査、はやぶさ2、エンケラドスとタイタンの海の問題、原始太陽系や将来の太陽、系外惑星、天の川銀河とアンドロメダ座大銀河が合体した「ミルカミーダ」、インフレーション宇宙論、ダークマター、ダークエネルギー等々を概観しようと思うなら、若い貴方でももちろん結構。熟読されたし。