- 慶應義塾大学出版会
- 18.8×12.8cm、120ページ
- ISBN 978-4766424928
- 価格 1944円
副題にあるブラックホールと重力波の本の中でも、出色のもの。なぜかというと、評者のようなせつない解説員でなく、現職の研究者が書いたものだからだ。後書きにあるように、続々と単なる理論ではなく観測上のめざましい新事実が見つかりつつある現在、筆者は楽しくてしようがないそうだからだ。本文のあちこちから、それがヒシヒシと伝わってくる。
その一例(本書34頁)は、2013年4月25日にいて座A*近傍に起こった事件。結局は1か月以上はらはらどきどきが続いた結果、ブラックホールそのものの現象ではなく、強磁場中性子星が起こしたX線バーストだったが、この数行の報告の背部から見事にそれに立ち会った研究者の心境が伝わってくる。本書のあちこちに似たようなイベントが記載され、評者のようなしがない観測者の端くれにも、その喜びが実感できるのだ。
それも、変光星のような(今や少しマイナーな)観測対象ではなく、超一流の重力波などですよ! これはみなさん、読まねばいけません。それもたった100頁の短編ですが、はらはらどきどきのまま1000頁の大部書を読んだみたいになるのだ。幸せですよ。
最新本であることは、他でも判る。本書表読者のみなさん、野良ブラックホールってこれまで聞いたことあります? 少なくとも評者は、本書で初見の用語。学術用語集では絶対にお目にかかれない。本棚に場所は取らないので、ぜひご購入を。