- 恒星社厚生閣
- 21×14.8cm、244ページ
- ISBN 978-4769916000
- 価格 5220円
著者ウィックラマシンゲは、あのビッグバンという用語の提唱者(実はビッグバンを揶揄した用語)ホイルと共同で、地球上の生命が宇宙からもたらされたというパンスペルミア説を唱えた人として、知る人ぞ知る人だったが、それは科学雑誌などでしか伝えられず、それも変わった説として紹介されるだけだったが、著者の見解を伝える分厚い著書となった。著者はスリランカ国民栄誉賞受賞、英国のナイトの称号を持ち、70代後半になった現在も英国バッキンガム大学宇宙生物学研究所長として活躍している世界的学者である。ただし、本書記事には科学的に未確認の説や明らかな誤りもあり、古いデータも多く、訳者・監修者による指摘(米印の付いた注)が多々ある。軽く信じ込むのは要注意である。
特に90〜101ページの疫病は宇宙からやってきた以下が、本書の最も核心的で革新的な部分。パンスペルミアはもちろん、インフルエンザが太陽活動極大期に一致していた等は、全くの新知見(評者にとって)。ウィルスが宇宙空間を飛行中にどのような状態になっているかは、その状態下にいるウィルスに聞いてみないと判らないが、何とか辿り着いた地球上での統計的研究によって、パンスペルミアの事実は疑うことが難しい。
ことの当否は別にして、読者の皆さんには、奇抜な発想法というのも実は科学の発展に大きく寄与する可能性があることを、ぜひ学んでいただきたいので本書評に採用した。