- 技術評論社
- 四六判、272ページ
- ISBN 978-4-7741-3197-9
- 価格 1,659円
書評を書き始めてはや一年。この間行く先々で書店に立ち寄り、これは…と思った本を購入してすでに優に百冊を超えた。おかげで我が家の仕事場(とても書斎とはいえない場所)は、いよいよ本で埋まり崩れそう。ともかくこれでお分かりだと思うが、本欄書評にもれた本も多数ある。もれなかったうちの一冊がこの本だ。
すでに何度かお伝えしたように、評者が選ぶのはただ「解説員が読む(べき)本」だけだ。今や広く用いられるようになった「天体観望会」の命名者として、プラネタリウム解説員=星空案内人と自覚している。だから、「星空案内人が読む(べき)本」と読み替えて頂いてもよい。評者がこりゃ買わなきゃ…と考えるのは当然のことだ。
本書は、評者が小4の時初めて望遠鏡で土星を見せてくれた近所の肉屋のお兄さんのごとき人に指針となる本だ。「星」に長けている人は浮世に疎いという誤解が世にまま見受けられるが、実はそういう人こそ洞察力に富み、文化に深い造詣を持つ。
なので、適切な指針さえあれば、案内人として素晴らしい前進が期待できるのである。本書は星のソムリエ志願者ばかりでなく、一般の方々への天文学の教科書としてもおすすめできる。本書にも指摘されているが、これからのソムリエには、従来の洋食中心のメニューばかりでなく、「日本の星伝承」という和食メニューもぜひマスターしていただきたいものだ。
なお、付録の「星空案内人認定試験模擬問題」に、評者もどうにかこうにかパスできた。みなさんもどうぞ!
「やまがた天文台」で、星空ガイドツアーのガイドを養成するためにスタートしたのが、星空案内人「星のソムリエ」の資格認定制度。現在、7団体で認定講座が開かれているが、誰もが資格取得できるように必要な情報を詰め込んだのが本書だ。内容は、星座の話題から最新の天文学や宇宙論、さらに天体望遠鏡の理論や実際の使い方、そうした望遠鏡や双眼鏡で楽しめる代表的な天体の紹介まで、多岐に渡る。いずれも話題は浅く広いものだが、さまざまな話題をまんべんなく勉強していることが星空案内人には必要という著者陣の認識からである。すでに天文同好会などで、一般に向けての観望会を行っている人のネタ本としても優れた一冊といえるだろう。