- 技術評論社
- 四六判、224ページ
- ISBN4-7741-3367-1
- 価格 1,659円
まず申し上げておきたい。48年前天文学を専攻に選んでよかったと、評者はつくづく思う。本書を読み、ノウミソをシャワーで洗ったような衝撃を感じたからだ。つい最近まで思いもよらなかった系外惑星の発見と研究の方法が、たった10年ほどで破竹の勢いで進歩したことが、語り口はやさしいが科学的にきっちりと説明されているのだ。この素晴らしい発展を、一般の方向けにやさしく書いてもらえる時代になったことを、素晴らしい著者たちとともに喜びたいし、評者は著者たちを大変うらやましく思ってもしまうのだ。
本書から学べるもっとも大事なことは、太陽系が当たり前でない(太陽系の常識が実は常識ではない)ことだ。例えば、太陽系の惑星たちの軌道はおおよそ円(離心率がほぼ0)だが、系外惑星では離心率0.4や0.5が当たり前。0.9などというものも見つかっているという。円軌道が決して当たり前ではないのだ。
昔、ギリシャの哲学者たちは、太陽・月・五惑星の軌道は円であると信じて疑わなかった。宇宙は完全無欠だから完全な図形、すなわち円を描くと信じた。数千年経過後、それが明確な誤りであることになったわけだ。こうなると、宗教や哲学も、冷厳な科学的事実に目をつむることができなくなったはずである。美的感覚やら、道理やらのあくまで人間中心の見方をもう一回考え直して見よう。そのためにみなさん、本書をじっくり読み、哲学しよう。太陽系、惑星そして地球無くして、モノを考えることなどできないのだから。
本書は2008年現在の最新データブックでもある。270個以上見つかっているすべての系外惑星が個々詳細に論じられているわけではないが、現時点で大事な惑星系についてはすべて網羅され、解説されている。特に微惑星の暴走成長で地球型や巨大ガス惑星・氷惑星が形成される過程、惑星落下や、昔はパチンコ効果と呼ばれたジャンピング・ジュピターモデルからエキセントリック・プラネットが作られるプロセスなど、まさしくチャレンジングでダイナミックな天文学を学ぶことができる。特に、ロシター効果で惑星の公転軸の傾きがわかる(須藤先生のHD209458bの研究経過は読んでいてワクワクする)や、トランジット法による観測はアマチュアの活躍(JAPOAの大島先生の国内初観測もスゴイ)、すばる望遠鏡とALMA、観測衛星を使った今後の観測予定も、具体的でわかりやすく書かれている。共著者と関係者のこれからの研究を応援したい。
この本の見どころをアストロアーツ ニュースで紹介しています。