- 技術評論社
- 四六判、248ページ
- ISBN 978-4-7741-3515-1
- 価格 1,659円
国立天文台で小惑星探査を専門にされていたばりばりの天文学者で、一方で天文学史を研究されてきた著者が、江戸時代の天文学を語った専門書。渋川春海や麻田剛立、伊能忠敬などの有名どころの記述はもちろんだが、評者はそれ以外の人々の情報にも注目した。
たとえば、あの暴れん坊将軍が実は天文将軍だったという、八代将軍徳川吉宗についての紹介は、他の本にまったく見ることができない凄い内容である。大岡越前守忠相を江戸南町奉行に抜擢したのが吉宗だったのは、いかにもさもありなんだ。また、江戸時代唯一の国際水準の業績と筆者が称える志筑忠雄のことや、高橋至時が光行差を理解できなかったことなど、知られざるエピソードも多く語られる。
さらにまた、地方の測量家の紹介や、その測量法や測量機器(とくに日本独自のオクタント:八分儀)の記事、そして岩崎善兵衛や国友藤兵衛の望遠鏡技術など、記された内容は実に多彩である。かねてより江戸時代の天文学者について知りたいと願っていた評者にとって、期待どおりの一冊となった。天文ファンすべてにおすすめしたい本である。