- 青土社
- 22×14.2cm、246ページ
- ISBN 978-4791713486
- 価格 1512円
本書評で既に紹介した宇宙倫理学。それを共通テーマにした特集である。よって、まるで哲学書。宇宙、宇宙と言ってきた評者が最も苦手とする分野である。しかしながら、系外惑星の発見で天文学がこれほどまで変身することを見通し、予期しなかった自分を悔やむことは別として、ペガスス座51番の系外惑星が発見された1995年を境に、天文学の大変革が起こったことは全くの事実である。よって、難しい内容の本書を正面から読み切ることを、評者は避けて通れない仕事と受け止めることにした。
しかしながら、立岩真也さんが書いた福島あき江さんに関する記事は、まさしく感動したのでご紹介しておく。福島さんは筋ジストロフィーで29歳という若さで亡くなった。何とお姉さんも若くして亡くなった。ご本人の自伝と言うべき物語は、テレビドラマ化もされた。詳細は本誌記事をお読みいただきたい。次号にも続編が掲載されるという。
一方では人の一生という荘厳な事実を、片一方では宇宙生命という現在はまだ仮想ではあるが受け止めなければならないことを、天文解説員としてどのように対応すべきなのであろうか。本書を読んで深刻に受け止めざるを得なくなったのである。宇宙生命の探索や宇宙開発はお金の無駄遣いと論じる人も多いが、評者はそうは思わない。本書の一篇関根康人先生の記事にある、今月寿命を迎えた土星探査機「カッシーニ」は果たして無駄でしたか?