- ソフトバンククリエイティブ
- 新書判、288ページ
- ISBN 978-4-7973-5070-8
- 価格 1,000円
本書一番の特徴は、太陽系のことがここまではわかっていてここからがわからない、ということを見事にわからせてくれることだ。もちろんその対象者は専門家ではない。
例えば彗星は汚れた雪玉だと言われ続けてきた。そのニックネームの当否は別として、岩石と氷がごちゃごちゃとしているのは確か。しかし、高温で結晶化する岩と低温の氷がどこで共存するようになったのだろう。
木星と土星は、太陽から受け取るよりも多くのエネルギーを放射しているが、土星の方が木星より多いのだ。土星は木星より小さいというのに、この熱源は何なのか? 一方木星の表面は水素・ヘリウム・メタン・アンモニア・硫化水素などでできているが、いずれも無色な物質。なぜ、大赤斑・縞模様が色づいて見えるのか。
本書は、これら一見簡単そうな難問をやさしく提示し、丁寧に説明し、わかっていないことはその方向性を含めて明確にしてくれているのである。なので、本書のタイトルがむしろ「ここからはわかっていない新・太陽系」と改めた方が良いのではないかと、評者は考える。読んでいて、それほどにワクワクする本と言える。
評者は、理系の人が書いた本かどうかは掲載されたグラフの数で判断している。本書では13個、ことさら多いと言うほどではないとしても、多少グラフに頼っていることに理系の特徴が出ている。たぶん文系の人はそれらをすっ飛ばすだろうなと思いながら読み進んだ。ただ、ざっと見る限り、図版が全面の3分の2を占めており、文章はストレートなので中高生でもあっという間に読み切ることができるだろう。
そして、当然のことながら、ホット・ジュピターやエキセントリック・プラネットあるいはスーパーアースなど系外惑星についても、章を設けて説明してくれている。特に第7章「太陽系の外の惑星系」と第8章「惑星の大気と生命存在条件」は必読だ。系外惑星に関する番組を作ろうとしていたプラネタリウム解説員に、先日「これ、いいよ」と勧めてしまった。