- 洋泉社
- 17.5×10.6cm、223ページ
- ISBN 978-4800314383
- 価格 1058円
火星大接近に関する記事執筆の依頼を受けて、西郷星と桐野星調査に書店を訪れ、本書を見つけた。早速立ち読み購入。その際、女店員さんに「今夏の火星大接近では本書が売れますよ」と言ったら大喜びされた。ともかく、西郷星に関する本では最も詳しい文献。
ただし、気になることもある。本書では桐野星が木星とされているが根拠は示されていない。確かに西郷が桐野とともに死んだ夜(1877年9月23日)、火星は東の空に見えてはいたが、土星〜火星間約7度に対して、木星〜火星間は74度と10倍以上離れていた。つまり、木星は宵の口に没してしまい、火星と土星は一晩中主役として輝いていたのだ。おそらく一般人の著者はステラナビゲータをご存じないのだろう。桐野星は土星です。
それはともかく、西郷や桐野らがなぜ星になったのかという本来の疑問については、本書では詳細な記述と多数の貴重な図版が掲載され、評者は時間の経過を忘れるほど楽しく読ませてもらった。と同時に、明治の初めに望遠鏡が一般人に普及していたことを読み取ることもできた。日時の課題はあるが、望遠鏡を通して火星面に見た西郷の武将姿は火星の大シルチスではないだろうか、あるいは1889年2月27日、地球から1.5天文単位の何でもない1等の火星を西郷星の再来と勘違いされたエピソードも紹介されている。今度は6度余りの位置に木星が輝いていたはずだ。本書のご購読をお勧めします。