- 宮帯出版社
- 16.8×10.4cm、128ページ
- ISBN 978-4801602069
- 価格 500円
やれ、万葉集だ、初の日本古典を原典とする元号だと、政府や報道機関をあげての大騒ぎに翻弄されましたね。実はそうではないのですと名乗りを上げたのが本書。それも西暦2世紀の中国の科学者・張衡(中国読みファン・ヘン:小惑星(1802)に命名)の著『帰田賦』が原典だというもの。どうです、これだけで本書を読みたいと思いません? もちろん、その原文も載っている。
張衡については、評者も世界初の地震計(地動儀)、水時計や風向計の発明者で、2500個の恒星の観測者、月食の説明者、月視直径や円周率の測定者、1太陽年=365+1/4日の決定者等々、中国古代(日本で言えば弥生時代)の大科学者だったことを知っていたが、まさか令和の出典者だったとは知らなかった。
万葉時代、日本の貴族たちはこぞって中国の古典を読みあさったのだ。つまりそれが貴族の教養であり、仕事だったからだ。大体、元号だって本来は中国のまねではありませんか。中国では100年以上前に、一時期使用していた朝鮮やベトナムなども元号を廃止し、今では使用しているのは日本だけ。それも、出典が独自のものと堂々と言ってのける科学性の無さ。でも、それはどうでも良いこと。どうでも良くないのが、大和言葉に「れ」で始まるものはなく、呉音で「りょう」が正解だと本書にある。だから、りょうわじゃないのだろうか。
この際、評者は張衡という科学者の存在を広く皆さんに知っていただきたいと思う。ただし、この本はなかなか本屋さんで見かけないだろう。評者も近所の書店でたまたま見かけたので、買うことができた。ISBNを頼りにしてお買い求めください。