- 築地書館
- 360ページ
- 定価 3520円
同著者同訳者による『月の科学と人間の歴史の歴史』も楽しく読ませてもらったが、本書は一層おもしろい内容である。もちろん今度は月ではなく、太陽だ。いずれも天文学の中で1、2を争うポピュラーな天体。キリスト教でも仏教でも、聖人や如来様でも頭の後ろに描かれるあの光環や光輪が太陽コロナ起源だということは、天文ファンなら誰もが知っていることだろう(但し本書には記載なし)が、それ以外に未だに太陽には様々な謎がある。
たとえば、本書第10章にある季節性感情障害(SAD)、くる病、肌の色を支配するビタミンDなど。詳細は、読者皆さんの命に関わることですから、ぜひ本書でお勉強ください。とくにイギリスの天文学者マウンダーの時代(19世紀後半)が肉眼黒点を認めた時、事態は大きく変化した。それによって、太陽に長期にわたる変動があることが明らかになり、それが人間の歴史や文化を大きく変えていることが明らかになったのである。つまり、人間が歴史を作ったのではなく、太陽が歴史を変えているのであるというワケ。
今や科学技術の時代と言われ、人類の発展が世界を変えていると思われがちだが、実は太陽や地球、動物や植物、自然界や宇宙が人類の文化を発展させているのだ。決して人類のみがその努力によって世界を変えているのではありません。ましてや、神様や宗教心がそれを図っているのでもない。本書を読んでつくづく謙虚さを学んだというわけ…。