- 日経BP社
- 四六判、288ページ
- ISBN4-8222-8288-0
- 価格 2,100円
「ビッグバン」とはあるが宇宙論の本ではなく、ベルギー人神父ルメートルの伝記。といって、決して抹香臭い護教論的なものではなく、むしろ科学者としての正伝だ。1951年11月ローマ教皇が膨張宇宙論を神学理論として認める発言をした時、それを大きく諌めたというエピソードが何よりもそれを物語る。評者もかねがね“膨張宇宙論創始者”“ビッグバン・マン”“ビッグバンの名残りの最初の提唱者”などと呼ばれたこの人を知りたいと考えていたが、実はこれまでほとんど手がかりがなかった。アインシュタインやガモフなどの派手な人々にうずもれて、ローマン・カラーの黒尽くめ神父服は、ややもすると滑稽に扱われている。しかし、この本はその虚像を徹底的に覆してくれた快心の著作と考える。かつてガリレオ裁判という過ちを犯したローマ・カトリック教会が、現代でも得体の知れない反科学的組織と思い込んでおられる方だけでなく、万人向きの好書である。