- 光村推古書院 刊
- 21.2 x 15.6cm、191ページ
- 2006年3月
- ISBN 978-4-8381-0363-8
- 価格 2,520円
著者はあとがきで、撮影効率が悪い月風景写真にこだわって四半世紀余り撮影してきたのはなぜかと問い続け、月の写真を見ながら読み物として楽しむことができるように本書を書いたとおっしゃる。本当にその通りで、惚れ惚れとするほど美しい月景写真と、まさに文学評論と言って良い優れた文章に、評者は耽溺してしまった。
月は美しく、星もきらびやかで、感性豊かな我が同胞がこれまでに数多くの和歌や詩歌、俳句や小説、そして日本画や歌謡曲に描きこんで来ているが、不思議とそれを論じた文章や書物に巡り合うことは少ないとみなさん感じられませんか?
評者が思うに、それはプラネタリウム関係者や天文アマチュアに、評者同様感性が不足しているためではないだろうか。その自己反省のもとに、本書をこだわり書評愛読者のみなさんに本書をお捧げしたい。本書は初版2006年第二版2009年刊の美本である。豪華本ともいえる。そして、特に日本の月に関する雑学書でもある。だが、そんじょそこらの雑学書ではなく、和歌・俳句・小説など文学全般に深く掘り下げた雑学書で、評者は本書から多数の知識をノートさせていただいた。
例その1。月に不死(富士はここから出た言葉:竹取物語にかかわる)の薬があると信じられたわけは、月が満ち欠けを繰り返すことから。
その2。古代日本では、織姫彦星がデートできたのは、月が空を渡り終えてから。
その3。She is still mooning over himの意味は、「ボーっと夢心地」である。その他多数。
「私を追いかけて夜中に車を飛ばすようなことは、もういい加減にやめなさい」と月に諭されていると言う著者の心情は、評者にもそのまま当てはまる。もちろん評者の場合は、美しい月ではなく悪魔の星アルゴルである。