- ワニブックス
- 207ページ
- 定価 968円
数年前、2035年に火星に向けて殖民に入るという計画が提起されたが、その後どうなったのだろう。それはさておき、現在日本のあちこちの書店で火星旅行の関係書が発売されている。本書もその一冊で、中で最も面白い、というか役立つ本である。
75歳になってしまった評者は、同じ2035年の9月2日10時10分に茨城県水戸市で見ることができる皆既日食を、なんとか這いつくばってでも見に行きたいと思っている。何しろ東京では(島嶼部を除き)江戸時代から見えておらず、21世紀中に他に見ることができないからだ。さすがに火星に行くことは資金的にも体力的にも不可能だが、若い読者の皆さんにはぜひ頑張っていただきたい。ともかく、そういう時代になったのだ。
本書は、天体としての火星の特徴から始まって、カナル(運河)などの論争と観測史、水の存在、火星開発の現状と問題点が明らかにされている。アポロ計画による月探査と較べて、行くことができる期間が格段に短く狭いことや、反対に飛行期間が格段に長いこと、さらに地球帰還のための燃料の問題、つまり行ったらそれっきりになりかねないことなど、問題が山積みであることは目に見えているが、それでも本書で語られていることは、戦争に明け暮れている地球なんか離れたいと考えておられる未来志向の方々にとっては、本気で考えるべきだろう。お勧めします。