- ベレ出版 刊
- 19×13.3cm、285ページ
- ISBN 978-4860644611
- 価格 1,836円
評者は、人(特に天文学者や観測家)が、どのようなきっかけで宇宙に関心を持った(例えば土星を望遠鏡で見たなど)のかに関心があるため、これまで多数のメモを残してきたが、著者の「この世で一番凄いエネルギーは何?と訊いたときに、技術者だったお父様が星が壊れたり、星同士が衝突したときのエネルギーだよと答えてくれたのがそれ」という答は、初めてのものだった。著者が理論物理から宇宙論に入ったことがよく判った次第。
ともかく、本書は一般の読者に易しさに徹して書かれた天体物理学書である。ダークマターに始まり、ダークエネルギー(今や殆ど日常語にもなってきている)、インフレーション・ビッグバン(一般には順番が逆のように誤解されている)、相転移、ヒッグス粒子を経て、膜宇宙、超弦理論に至るまで、理論屋さんにありがちな物理式に頼らず(必要最低限な式はある)、難しい概念を極力易しく説明しようと努力されていることに敬意を表したい。
文系の人でも、観測から許される最低の宇宙直径が780億光年、1プランク時間内に光が進める距離が1プランク長、宇宙の最後は、銀河や恒星ばかりでなく原子核や陽子等までも消えていく、などなど多分チンプンカンプンなことも現代宇宙論の研究分野であることはお判り戴けるだろうし、理系の人ならハッスルしてしまうことも説明されている。
そうなんです。今やここまで来ているのです。あしたが怖い!