- INAX出版
- 22.8×17.2cm、208ページ
- ISBN4-87275-140-X
- 価格 1,575円
書店本棚で本書を見かけた途端、評者は深く反省させられた。人工衛星50周年の記念されるべき今年、もう何人もの宇宙飛行士・宇宙旅行者がいるのに、滞在すべき基地の建物についてはほとんど知らなかった、そして知ろうとしなかったことだ。月面に空気はおろか水がないことに、なんで思い至らなかったのだろうか。なにしろ普通ではコンクリート建築ができないはず。材料はあってもこねるべき水がない! 有人探査の有効性が議論される中、肝心の建築物について評者は夢の中。本書を購入し読み始めた途端、現実の中に引き戻されて、ほっと一安心したのだ。建築技術は遥か彼方まで進んでいた。耐寒・耐熱・高真空・低重力・天体衝突・耐放射線がほぼ同時に要求されるチョー過酷条件に加えて資材運搬の困難さは、言うまでもなくフツウではないのだ。この本には、多数の建築家が多方面から語る夢と現実が満ちあふれており、わくわくするような魅力ある内容になっている。建築の最新技術について評者には論ずる資格がないことばかりだが、評者の仕事にとっては、DO-IT-YOURSELF MANUAL in SPACE(宇宙飛行士マニュアル)と、詳細な「宇宙建築構想年表」が非常に役立つものである。小さな文字でスペースいっぱいにギッシリと書かれた記事を、老眼のまなこをこすりながらチビリチビリと読み解く毎日である。広くみなさんにおすすめしたい。