- クバプロ
- A5判、238ページ
- ISBN 978-4-87805-091-6
- 価格 2,415円
評者は、休日や仕事帰りに都内の大書店に立ち寄り、本コーナーでみなさんの本選びに協力するため、天文書を漁っている。だが、これまで平成20年3月20日に出版されたこの本を見たのは、新宿の大書店一店舗だけだった。ある意味では貴重だが、それだけ店側が売れないだろうと見限った証明である。だからこそ、このこだわり書評でご紹介させていただくことにしたのだ。一言で言えば貴重な、これこそ出版の価値がある本である。
最近、天文の本と言えば宇宙論、それもアインシュタインかホーキング。でなければ星座の見つけ方や「すぐわかる×××」。著者もほとんど有名人数人に絞り込める版ばかり…、だとみなさん思いません? その反動で、この人が書いている本だから買わない、従ってここ数年天文書を買っていないという人を、評者は何人も知っている。
本書は理科系でなければ読みこなせないほど堅く、しかも程度の高い本。だが、これを知らずして現代天文学、特に恒星内部構造は論ぜられないという内容の本でもあり、特にプラネタリウム解説員には必須の知識、と評者は考えている。星座の話をしているだけでは結局お客様から信頼されない。太陽内部がなぜ1,500万度あって、コロナがなぜ200万度で、表面がなぜたったの6,000度なのか、答えられますか? また、ニュートリノでどうやって太陽が撮影できるのだろう。そもそも、核融合がなぜ太陽エネルギーの一番の候補だと言い切れるのだろう。
本書は専門書であり、決して気軽に読み通せるものではない。なにしろ、専門家が専門家向けに語っている内容だからだ。よくも一般書店で売ることができたと評者は正直に思う。だが、これこそが現代の天体物理学なのだ。現代の天文学者は、こういうことを真正面から議論しているのだ。その状況を読み取っていただくだけで、たぶん本書出版の意味合いは十分達成できると評者は考える。なので、ぜひ一般の皆さん方に、わかってもわからなくても読み応え十分の本書を読み通していただきたい。
特に第一章の太陽に関する部分(国立天文台の桜井先生と東大宇宙線研究所の鈴木先生が執筆)は、太陽の継続観測をされている方々にぜひ完読いただきたい。すごく啓蒙されますよ。なお、本書は自然科学研究機構シンポジウムの収録集。これだけでビビるようでは、老年になってしまった評者ならいざ知らず、いけませんよ、若いこれからのあなた!