- 彩図社
- 四六判、224ページ
- ISBN 978-4-88392-708-1
- 価格 1,260円
歴史は人間が創るもの。いかに機械や装置の性能が上がろうとも、最終的には「勇気」と「決断」と「行動」が、その後の「進歩」と「発展」を生み出すのである。本書を読んで、決断=言葉を発することが、人間が創る歴史に於いて、いかに重要な要素であるかを評者は心底から思い知らされた。
例えば、「誰であろうと、どこにいようと、少しの間。手を休めて、この数時間の間に起きたことを思い起こし、それぞれのやり方で感謝を捧げてほしいと思います」と、月面着陸後のアポロ11号着陸船イーグル号内で自分だけの聖餐式を行ったときに宇宙飛行士オルドリンがヒューストンと全人類に語った言葉を、あるいはあのアポロ13号船長ラヴェルの言葉「遠く離れた月で親指を立てると、親指の裏に地球が隠れる。愛する人たちも、仕事も、地球自体の問題も。すべて隠れてしまう」を、あなたはどう思われるだろう。本書はどこを開いても、右に魂を揺さぶる宇宙飛行士の言葉、左にその背景や関連事項の解説が記されている。世間を知り、人もよく知るベテラン編集ライターの高井氏だからこそ書けた珠玉の解説にも評者は感動してしまった!
一度読むと「もういいや」という本とは大違い。名著は何度も何度も読み返すと、何度も何度も違った勉強ができるという。本書はまさしくそんな本である。宇宙関連の仕事を生業とする人々はもちろん、宇宙や地球、自然や人間の教育に関連している方々には、本書を深く味わうことを特におすすめしたい。
なお、この機会に評者からも一つ取って置きの名言を提供させていただきたい。それは宇宙飛行士の言葉ではなく、米陸軍レッドストーン工廠にいたハミル少佐のもので、フォン・ブラウンを称しての言葉「二階の奴さん、月のことばかり考えているよ。大した情熱家だ」