生みの親が語る「はやぶさ」 「待っていました、真打ち登場!!」といった感じで、小惑星探査機はやぶさのプロジェクトマネージャー川口淳一郎教授の著書が発売された。今までこのコーナーで様々な人が執筆した「はやぶさ関連本」を紹介してきたが、やはりプロジェクトリーダー本人が語る言葉には臨場感がある。計画を推進するときの気持ちの高揚、順調なときの安堵と失敗がわかったときの不安、解決策をさぐる探求心。そして何よりも、最後まで仲間と自分を信じてあきらめない強い願い。「はやぶさの帰還」に多くの日本人が感動したのは、実は「はやぶさを支え続けたプロジェクトチーム」に感動したのだろう。そんなチームを作ったのは間違いなく川口教授の人柄だと、この2冊を読むとわかる。「はやぶさ、そうまでして君は」はプロジェクト自体を時間経過に沿って紹介し、「『はやぶさ』式思考法 日本を復活させる24の提言」は計画を推進するために必要なことを24の言葉で啓発している。この本は彼以外に書けないものであり、その教えは仕事の成功、人生の幸福、日本の未来、何にでも当てはまるだろう。
記者が語る「はやぶさ」 上に紹介した2冊が「はやぶさについて、もっとも主観的に書かれた本」と言うなら、「『はやぶさ』からの贈り物」は対照的に「もっとも客観的に書かれた1冊」である。新聞社の記者が長きにわたり取材し、見て聞いて感じたことのリポートをまとめている。読みどころは、そのとき関係者がどんな表情をしていたか。顔がこわばったり、何かを噛みしめるようだったり。“他人”だから伝えられるものがある。そんな中で、はやぶさ帰還の章(と豪州で撮影した写真)には、記者自身が最後の姿を見た感動がストレートに表現されている。