今月公開された映画「はやぶさ」の原案「はやぶさ君の冒険日誌」は、表紙もイラストもかわいいが、内容はもっと“かわいい”。つまり、はやぶさ君が愛おしくなる本である。その秘密は、著者に代表されるはやぶさチームのメンバー全員が、探査機の誕生から(その一部であるカプセルの)帰還まで、慈しみを持って全力で向き合っていたからだ。もはや「日本国民のはやぶさ」となった探査機だが、技術者にとってはきっとどのプロジェクトも愛おしいものだと思う。世界中の科学者や研究者がさまざまなプロジェクトに取り組み、成功したり失敗したりしてるのだ、とふと思う。
「飛べ!『はやぶさ』」は小中学生を対象にした宇宙工学本で、著者いわく「はやぶさ」の“はじめてのおつかい”記録。ルビのふられた文章から躍動感が伝わってきて、子どもはきっと自分がチームの一員になった気持ちで「はやぶさ」を応援しながら読むだろう。さらに、この一冊で宇宙や探査機についてもしっかり学ぶことができる。
そして、大人には「『はやぶさ』の超技術」をお薦めする。はやぶさの運用に用いられた一つ一つの技術について、実際に関わった人たちが細かく証言している。これを読めば、彼らがどれほど緻密な計算をし、あきらめずに挑戦し続けたかよくわかる。科学書であるばかりでなく、一つのプロジェクトを成し遂げるための仕事術書であり、そして人生で目標へ向かって歩むための心理学書ともいえる。
小惑星探査機はやぶさに関係する本は、他にも次のようなものがある。「小惑星探査機はやぶさ−『玉手箱』は開かれた」(川口淳一郎著・ 中公新書)、「帰ってきた『はやぶさ』−小惑星探査機 7年60億キロの旅」(今泉耕介著・ ハイロン画・ハート出版)、「図解ですっきりラクラクわかる はやぶさのしくみ」(京極一樹著・アスキーメディアワークス)。「はやぶさものがたり」(今井なぎさ著・すがのやすのり絵・コスモピア)。
紹介しきれなかった本もあるし、まだこれからも関係本は発行されるかもしれない。これだけ多くの日本人が探査機はやぶさに関心を寄せたことも、ひとつの立派な成果だと言えるだろう。