多くの宇宙探査機や宇宙望遠鏡の打ち上げによって、太陽系天体の姿が驚くほど鮮明に撮影されたり、高解像・高性能な観測装置によって遠くて暗い天体の姿が捉えられたり、デジタルカメラの高感度化によって個人でもハイレベルな天体写真を撮影できるようになった。そこで今月は、さまざまな視点から見たさまざまな天体の本を紹介しよう。
「ビジュアル大宇宙」[上][下]は、2冊あわせて100の宇宙トピックスについて、大判の写真とわかりやすいCGやイラストを使って解説したビジュアル図鑑。[上]は「宇宙の起源」や「正体」、「星の誕生」や「最期」など宇宙全体の姿を、1つのテーマにつき4ページで掲載。[下]は、テーマを地球を含む太陽系に絞った内容になっている。興味深いのは、画像が美しいだけでなく、扱っているテーマや解説文が最新情報であることだ。著者も「本書執筆中、私が書くペースが天文学の新発見が発表されるペースに追いついていないようにしきりに感じられた」と綴っている。この本は、彼の言葉を借りれば「最新の天文学をスナップショットした」ものだ。
「星空の図鑑」は、イギリスのDorling Kindersley社(DK社)の『THE NIGHT SKY MONTH BY MONTH』を翻訳した大型ハードブック。2014年から2022年に見られる毎月の星空と天文現象を、多角的な手法で紹介している。まず、「あらまし」で毎月の基本的な星空を案内し、横長の星図に毎年の各惑星の位置を示している。次に「観察のハイライト」のページで、北と南の空を向いたときの見どころを半円形の星図で紹介。最後に、見開き2ページに星座早見のような円形で「全天図」を掲載している。しかも、それぞれの図は「北半球版」と「南半球版」を用意し、全天図には北緯60度、40度、20度、南緯0度、20度、40度の地平線と天頂の印を入れている。この1冊で、地球上のほとんどの場所の星空を知ることができるのだ。海外旅行に出かける前に目的地の星空をチェックしたり、将来の天文現象を世界のどこで見ようか計画を立てたくなる本だ。
「メシエ天体ビジュアルガイド」は、全メシエ天体を網羅したガイドアルバム。右ページにメシエ天体写真、左ページにその天体の「特徴」「見つけ方」「観察のポイント」「撮影アドバイス」を掲載している。写真集として眺めて美しいことはもちろん、双眼鏡や望遠鏡で天体観測をするとき、そして天体写真を撮影するときにきっと役に立つだろう。
「宇宙の絶景」は、ハッブル宇宙望遠鏡が写した天体の画像集。1990年4月に打ち上げられてから四半世紀にわたって、無数の天体の姿を私たちに届けてくれた。もはや「ハッブル」といったら、天文学者の名前よりも宇宙望遠鏡の方が先に浮かんでしまうくらいだ。後継機のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、2018年以降の打ち上げ予定。次はどんな“絶景”を見せてくれるか、今から楽しみだ。
「明日からやる気がでる!星空名言集」は、日本星景写真協会のメンバーが撮影した星空写真に、世界中の書物や偉人によって語られた名言を添え、ビジネス書ライターの上阪徹氏が解説文を載せた写真集。上阪氏は、経営や金融などをテーマにした雑誌・書籍に執筆してきた人物。インタビュアーとしても多くの人に会い、話を聞いてきた。そんな彼が選んだ言葉は、読む人に人生のさまざまなシーンを思い起こさせる。あらためて、私たちは星空を見上げるだけで、 心が癒されたり、勇気をもらったりするのだと気づく。「この世で変わらないのは、変わるということだけだ。(ジョナサン・スウィフト)」にはなるほどと思わせられた。たしかに、宇宙も変わり続けている。