大きな図鑑は、実物を手にしたときの重さや、ページをめくるときの紙のしなやかさから、重厚な存在感が伝わってくる。星ナビ誌面上ではせめて、立派な装丁だけでも皆さんに伝えられればと思い、今回は表紙を大きめに掲載した。
『美しい光の図鑑』は、2015年の国際光年(ひかりねん)を機に制作された本で、紹介されている画像の多くは国際光年のオンラインショーケース「LIGHT: Beyond the Bulb」がベースになっている。副題に「宇宙に満ちる、見えない光と見える光」とあるように、この図鑑では人間に見える光(可視光)のほかにさまざまな“光”があることを私たちに伝える。スペクトルに従い7つの章に分け、各光の違いや共通点について、目で見て直感できるように擬似カラーなども駆使しながら解説。それでいて「基本的には同じ光である」という事実を、スペクトル表示で示している。もしも人間の目ですべての光を捉えることができたら、世界はまったく違う姿に見えてくるのだろう……と想像してしまう。また、それぞれの分野に関係する人物を取り上げているところも興味深い。
『世界で一番美しい深宇宙図鑑』というタイトルを聞くと『世界で一番美しい元素図鑑』や『世界で一番美しい分子図鑑』を思い出す人がいるかもしれない。同じ創元社が出しているシリーズで、想像イラストも含めたすべての画像が美しい。この本でいう「深宇宙」は太陽系の外に広がる宇宙全体のことを指しているが、大型天体望遠鏡や宇宙望遠鏡の発達により撮影され表現されるようになった「ヴィジュアルサイエンス」の世界ともいえる。内容は天の川銀河から“遠いお隣さん”の局部銀河群、そして銀河、さらに銀河団へと、どんどん宇宙の深みへ旅するように進んでいく。ページ端にある「パスポート」コーナーで各天体に迫るための天球上の位置や距離などを紹介し、巻末の星図とともに、深宇宙への旅のガイド役を果たしている。
『星と星座』は、写真やイラストで解説するだけでなく、動画を組み合わせることでありのままの姿を児童にもわかりやすく伝える図鑑。夏休みに向けて、親子でいっしょに星空の観察をするのにぴったりだ。四季の四方の星空を載せ、代表的な星座とそれにまつわる神話や豆知識を紹介しているから、子どもでもイメージをふくらませながら星空を楽しめる。物語はギリシア神話だけでなく、日本の民話やアイヌ民族の伝説、アメリカ先住民・中国・ロシアに伝わる話も紹介されている。見やすくて、自然に関係情報も学べるように良くできている。付属の星座早見盤を使って、空を動いていく本物の星や星座を眺めてほしい。
最後は、ちょっとユニークな『ガラケーで撮影した感動の天体写真集!』。「はたしてガラケーで天体写真が撮れるのか」というテーマで2013年に出版された『ガラケーで撮影する感動!! 天体写真』(Kindle版)の第2弾。著者はガラケー(シャープ945SH)を駆使して、東海地区を中心に天体を撮り続けている。もちろん画質や色の点では高価なカメラや望遠鏡で撮影された写真に遠く及ばないが、むしろ小さくて常備できるガラケーだからこそ、日常生活の中ですぐに星や月が撮れる。場所やアングルを工夫するだけでオリジナルの星景写真になる。電子書籍版のみのため重厚な図鑑をめくる楽しみは味わえないが、具体的な撮影方法が紹介されているので、フィールドに持ち出して子どもや写真初心者といっしょに撮影を楽しむといったシーンで活躍しそうだ。
(紹介:原智子)