夏休みになると海や山などへ出かけて、ふだん暮らしている街中よりも暗い夜空で星を見る人が増えるだろう。友だちや家族といっしょにあるいは一人で、望遠鏡や双眼鏡を使ってあるいは何も使わずに、いつもよりたくさんの星を見上げる。それぞれのシーンに、それぞれの楽しみ方がある。
『夏の星空案内』は「よむプラネタリウム」という副題どおり、現役プラネタリウム解説員の野崎洋子さんによる語りと、天体写真家の中西昭雄さんの写真で夏の星座や天の川、流星群などを紹介するガイドブック。表紙をめくるとまず大きなヒマワリの写真が登場し、次に山や入道雲という真夏の昼の風景から始まる。まさにプラネタリウムだ。やがて薄紅の夕焼け雲が現れて、ついに満天の星が……! 絵本をめくるように、ゆっくり星の世界にひたることができる。どの天体写真も、そのままフォトブックとして傍らに置きたくなるほど美しい。そしてプラネタリウムのエンディングは、やっぱり「みなさん、おはようございます」。この言葉とともに、朝日の差し込む林の写真でおしまい。巻末には「星の動き」解説と「星空観察の必需品」案内、そして「最新プラネタリウム事情」も紹介している。ちなみに9月には『秋の』、11月に『冬の』、17年1月に『春の』星空案内も発行予定。
女性が暮らしの中で星と親しむスタイルが広がり、「宙(そら)ガール」という言葉もかなり浸透してきた。『宙ガールバイブル』は、そんな女性たちの星空アドバイザーとも言える永田美絵さんが監修した、天文ライフ提案ブック。天体観測方法や四季の天体ショー・星まつりイベントなど、基本的な情報をしっかり押さえながら、カラフルな観測道具や防寒着などちょっと女子力高めのアイテムも掲載。さらに、星がデザインされたインテリアやグッズの紹介ページは、見ているだけでも楽しい。宙ガールだけでなく、彼女や奥さん、あるいは娘さんを星空の下へ連れ出したい男性が購入してプレゼントする手もアリ。
さて、ここまで星空を楽しむための本を紹介してきたが、実際のところはなかなか満天の星が見える場所は少ない。日本はもちろん、世界中どこでも人間が住んでいる場所は、夜でも昼間のように明かりが煌々と灯り“夜がなくなった(The End of Night)”といえる。その言葉が原題の『本当の夜をさがして』は、アメリカの大学で環境文学を教える著者が、光害について警鐘を鳴らすノンフィクション。天文学者をはじめ、動物学者、考古学者、自然保護運動家などの専門家に取材し、明かりと人間の歴史をさまざまな角度から分析している。
そんな明るい夜でも観測所のない都会でも、いつでも誰でも天体観測できる方法を紹介するのが『インターネット望遠鏡で観測!』。インターネットを利用して遠隔地の望遠鏡を操作し観測するシステムを、慶應義塾大学インターネット望遠鏡プロジェクトが五藤光学研究所と共同で開発し運用している。パート1で天文学の基本事項を説明し、パート2でそれに関連した研究テーマや観測手順を教えてくれる。このシステムを利用すれば、学校の授業や部活動の時間に、天文の勉強や研究をすることができるという。今まで何となく星を眺めたり写真を撮ったりしてきた人も、テーマ意識を持って観測するきっかけになりそう。天文教育の現場でも、役に立つだろう。
(紹介:原智子)