Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

星ナビ2017年6月号掲載
宇宙を学び宇宙を仕事に

新年度が始まり、新しい学校や職場で過ごしている人も多いのでは。そんな心機一転した機会にあらためて、「自分はこれから何を勉強したいのか」「どんな仕事をしたいのか」と考えてみるのもいいかもしれない。本誌の読者なら「天文や宇宙についてもっと学びたい」とか、「将来は天文や宇宙にかかわる職業に就きたい」と思っている人もいるだろう。そんな人たちの参考になりそうなのが『宇宙を仕事にしよう!』 だ。14歳の世渡り術シリーズで、宇宙や天文の場で働くプロフェッショナルが人生の後輩たちに語る本。トップバッターは、やはり花形職業の宇宙飛行だ。油井亀美也さんによると、宇宙飛行士になるにはチームワークを築ける人間力が必要で、苦手なことはそれを好きになって克服すればいいという。「14歳」を何十年も過ぎてしまった人でも、人生を前向きに過ごすヒントが得られそうだ。そのほか、ロケットの研究開発や管制官、天文学者など10人が、それぞれの夢を叶えるまでの過程や挫折など、具体的な道のりを話してくれる。

宇宙をビジネスシーンにする企業は、あんがい少なくない。雑誌『日経ビジネス』2017年1月16日号 (No.1874)では、「宇宙商売ビッグバン」という特集を組み、台頭するさまざまな宇宙ベンチャーを紹介している。小型のロケットや人工衛星の製作などのいわゆる宇宙ビジネス以外に、すでに多くの企業が利用しているものとして「各種データの活用」がある。例えば、宇宙から得た画像データを分析してマラソンの最適コースを割り出したり茶葉の最適な摘みごろを判別するなど、ユニークなものもあるのだ。

そんなたくさんある宇宙ビジネスのなかで、「自分は宇宙ロケットを作りたい!」という学生や若い研究者のテキストになるのが『宇宙ロケット工学入門』 だ。著者は、技術導入型ロケットから大型国産ロケットの開発まで携わった経歴を持ち、その知識と経験から得た実践的な宇宙ロケットの全体像を解説する。ロケット構造や運用法を教える専門書。

ロケットのように、宇宙やさまざまな場面で人間の助けとなる役割を果たすものにロボットがある。『ロボットの歴史を作ったロボット100』 は、神話時代の人造人間や著名なSF映画作品に登場するキャラクターなどのフィクションから、実際に製造された多様なロボットまで100体以上を紹介するビジュアル書籍。あなたにとって懐かしいのは、R2-D2やC-3POか、それともアトムか。いずれにしても、これら多くのロボットたちの先に、いつか月面や火星で働くロボットが出てくるのかもしれない。

ここからは、春の夜空をあつかった書籍を紹介しよう。いままで当コーナーで掲載してきた「よむプラネタリウム」シリーズから『春の星空案内』 が刊行された。これで四季の星空すべてがそろったことになる。タンポポや菜の花の黄色、桜のピンク色という美しい風景から夕日のオレンジ色に空が変わると、次のページは桜の花ごしに見えるおぼろ月。春編も季節感たっぷりだ。まさにプラネタリウムを見るように、子どもや天文初心者など誰でも楽しく星空散歩ができるから、この春に新生活を迎えた人へ贈ったら喜ばれるかも。

今号が発売されるのは大型連休中で、海外へ旅行に出かける人も多いだろう。そのなかには、ハワイやグアムなど緯度の低い地域へ、あるいはオーストラリアなどの南半球へ行く人もいるかもしれない。そんなときぜひ携帯したいのが『旅先での南天星空ガイド』 。いまの季節なら、あこがれの南十字星を探したいところだ。星空観測の未経験者でもわかるよう、あえて簡略化したシンプルな星図が良い。星を説明した後は、その星にまつわるエピソードや言い伝えなどを紹介するコラムも嬉しい。コンパクトだから旅のお供にもかさばらなくておすすめだ。

(紹介:原智子)