Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

星ナビ2019年10月号掲載
宇宙の暮らしと移住への展望

今までに人類が降り立った地球以外の天体は、月だけである。しかし、地球は長い歴史の中で火山活動や磁場変動など様々な要因により、人類にとって厳しい環境になることがある。さらに、隕石衝突などの外因によっても、人類が大きなダメージを受ける可能性がある。恐竜のように滅びてしまう前に、地球以外の天体に移住する準備を考えたくなるのも納得だ。前号では「宇宙ビジネス」として人間が宇宙を利用する本を紹介したが、今回は「将来の移住生活」について科学的に探ってみよう。

『人類、宇宙に住む』 は、「ひもの場の理論」の創始者の一人である理論物理学者のミチオ・カク氏が、人類移住の未来図を描いた読み物。その手順は、副題のように3つのステップ「月や火星への移住」「太陽系外への進出」「人体の改造や強化」を経て説明される。テレビやラジオの科学番組に出演している彼らしい、実にエキサイティングなストーリーである。不可能と思われることを可能にする科学的技術の解説から、地球外生命や宇宙の最期に話が発展していく展開は、思わず「人類とは」「生命とは」「宇宙とは」と考えさせられる。

次は“宇宙開発研究の現場にいた人物”が宇宙環境について教えてくれる本を2冊紹介する。まずは、日本の元JAXA研究員が著した『ヤバい「宇宙図鑑」』 。著者は、東京大学宇宙航空研究所で日本初の人工衛星「おおすみ」の打ち上げに携わり、宇宙開発事業団(現JAXA宇宙航空研究開発機構)で宇宙無線通信システムや宇宙ステーションの開発など多くのプロジェクトに参画した。同書では、宇宙のなにが“ヤバイ”のか小学生にもわかるよう、図解を用いながら総ルビでやさしく教えてくれる。たとえば、「宇宙は地球と全然違ってヤバイ」「漁業にも交通にも気象予報にも使われていてヤバイ」「宇宙の生活は地上と違ってヤバイ」、そして「未来の宇宙はヤバイ」ときた。宇宙と人間の暮らしの関わりについて学びたい子どもにピッタリだ。個人的には、人工衛星の機能を調べながら色を付ける特別付録「人工衛星ぬりえ」が超ヤバイ。

『宇宙飛行士に聞いてみた!』 は欧州宇宙機関(ESA)所属の宇宙飛行士で2015年に国際宇宙ステーションに186日滞在した著者が、経験に基づいて150以上の質問に答える本。タイムズ誌のベストセラーに7週連続ランクインし、刊行からわずか2か月で8万部超をセールスした。素朴な疑問から専門的な質問まで、実際に体験したからこそ言えるリアルな言葉が魅力だ。ちなみに、彼の回答の最後は「今、問われているのは、『月と火星に移住できるか』ではなく『いつ移住するか』なのだ!」。

最後に紹介するのは、人類の代わりに火星で現在も活動している探査車のお話『キュリオシティ』 。“好奇心”と名付けられた探査車が主人公になり、開発・製造・打ち上げ・火星着陸、運用内容について、少年ロボットのように語る絵本。2011年に打ち上げられ、翌年火星に軟着陸してから7年経ても、水の痕跡や生命の可能性を探り続けている。それにしても、味わいある大判の絵と、正確な情報の詰まった科学絵本は、やっぱり面白い。

(紹介:原智子)